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8cm W3-2141で 40Hz まで再生するバックロードホーン

設計

以前に作った 3FE22 のバックロードホーンが結構気に入ったのですがそれではホーン長をもっと長くすればもっと低い音まで再生できるのか挑戦してみようと思い立ちました。

 

パソコンに入っている Microsoft Visual C# で「簡単バックロード設計法」のサイトを参考にしてバックロードホーンの設計を行うプログラムを作成しました。なぜ 40Hz なのかというとベースの最低音が 42Hz なのでそれはきっちり出したいというところから決めました。それで3タイプのボックス形式でそれぞれ低音の再生限界 40Hz のものを作ってみました。その結果ボックスの高さと奥行とのバランスの取れた B タイプのもので実際に作ることにしました。これで理論的には低音が 40Hz まで再生可能となるはずです。

 これは少し前のバージョンのバックロードホーン設計プログラムで作った図面です。この図面で板を注文したので、これに従ってボックスを作ってみたいと思います。さてどんな結果になるのでしょうか。

 

作成したプログラムのバージョンが違うため寸法が多少異なります。新しいバージョンでは開口部のホーンの高さを多めにしています。また、C タイプの場合はホーン部の長さが奥行方向と縦方向で異なりますので縦方向のホーン高さはホーン部の長さの縦横比率によって縦部分の寸法を加減にするようにしています。

使用ユニット

8cm  W3-2141 で 40Hz まで再生するバックロードホーン 使用ユニットの特性
8cm W3-2141 で 40Hz まで再生するバックロードホーン 使用ユニットの特性

この TangBand W3-2141 という SPユニットは、出力音圧レベル が88dB と高く最低共振周波数 (以下 Fs) が 75Hz と 8cm ユニットとしては非常に低いです。またトータルQ (以下 Qts) が 0.39 と十分に低くバックロードホーンにも向いていると思いました。周波数特性を見てみると 200Hz あたりから低い方にかけてなだらかに低下しています。でも低下の具合がそれほど大きくはありません。Fs = 110 Hz ぐらいの一般的な 8cm ユニットだともっと急激に低下していきます。ここが魅力と言えるでしょう。このユニットなら長いホーンもパワーを持って駆動できるのではないかと思いこれに決めました。ただ価格が 1個 6,000円近くするのが悩みの種です。するとちょうどこのユニットがコイズミ無線でセールしていました。 1個 5,681円と値打ちでしたので購入しました。一緒にターミナルやケーブルも買いました。このセール価格で送料分くらいが浮いた感じです。

 

理想を言えば TangbBand W3-1878 を使いたいところです。こちらはネオジウムマグネット仕様で Qts = 0.28 です。完全にバックロードホーン向けのユニットと言えます。ただし値段が W3-2141 のおよそ 2.8 倍もします。ちょっと手が出ないというのが本音です。

製作

使用する板材は厚さ 15mm の MDF です。板と直線カットは株式会社アサヒさんで注文しました。5日ほどで届きました。

まず板の位置を示すケガキと穴開けをします。

次に側板の木口と外側を塗装します。ジェルカラーニスのマホガニーで塗りました。

その後は組立です。まずホーン部分を先に組み立ててしまいます。直角になるように注意しながら進めます。それから側板の片側を貼り付けて残りの板を貼ります。最後にもう一方の側板を貼って完成です。一晩ほどボンドを乾燥させます。なおホーンの開口部のデザインは設計と少し変更しました。

それから側板以外の部分を塗装します。スプレーラッカーのクリアです。

セッティングと試聴

前回と同じく Skinny Hightower の Retrospect いうアルバムを聴いてみました。3FE22 のバックロードホーンの場合と比べると確かにもっと低い音まで出ています。一番違うのはバスドラの音が「ポコッ」という感じから「ドスン」というふうに本来の音にだいぶ近くなったところです。やはり設計次第でバックロードホーンのカットオフ周波数が理論通り変わるのだと言うことが確認できました。

いい感じで音楽が聴けています。しばらく音楽に浸ってみます。

チューニング

とりあえず吸音材は何も入れていません。何か問題でも出たら考えることにします。

総括

カットオフ周波数を 40Hz に設定したバックロードホーンでそれに見合ったユニットを選択した場合には理論通りに低音の再生限界が変わるということが確認できました。



スーパーツィーターの追加

その後色々と音楽を聴いているうちにやはり高音が物足りないなと思いました。周波数特性で見ると中音から高音にかけてフラットなのですがバックロードホーンで中低音が増強されているだけに高音のレベルが合わないのだと思います。そこで手持ちのスーパーツィーターを追加しました。フルレンジのユニットはそのままでスーパーツィーターだけ -6dB / oct で逆相接続しました。スーパーツィーターのクロスオーバーは約 5,000 Hz です。アッテネーターで出力レベルはおよそ 95 dB 位にしています。これがフルレンジユニットに加わるのですが位相の関係もあるため総合では 周波数 5,000 ~ 20,000 Hz 間で 90dB 位になります。これで大体音のバランスとしては良い感じです。



後日、このボックスに FitalPRO 3FE33 を付けてみました。W3-2141 にスーパーツィーターを付けた場合低音が出すぎるのと中音が引っ込む感じなのでいわゆるドンシャリ的な音です。それに比べると 3FE22 の方はごく自然な音の出方で低音は出すぎず程よく出る、中音から高音にかけてレベルが上っているのでスーパーツィーターなしで良いです。私個人としてはこちらのユニットとの組み合わせが良いと思います。